
〜日本の双日が米ペガサスが運用するCVCファンドから戦略投資の実行、
投資後にVLP Therapeutics社との業務提携に成功〜
次世代ワクチン開発プロジェクトを共同実施
<概要>
双日株式会社とアメリカのスタートアップであるVLP Therapeuticsは、2021年に「次世代ワクチン開発プロジェクト」の共同実施を開始しました。
この協業の主な目的は、革新的なワクチン技術を活用し、感染症対策や医療インフラの強化に貢献することでした。
VLP Therapeutics(本社:アメリカ・メリーランド州 )は、従来のワクチン療法に革新をもたらす新しい 治療法の開発を目的に設立され、独自のVLP(Virus Like Particles:ウイルス様粒子)※1を基盤技術とし、がんに対する治療用ワクチンや マラリア、デング熱など[RI5] の感染症に対する予防用ワクチンの研究開発を進めています。
双日株式会社は日本を代表する総合商社の一つで、エネルギー、金属資源、化学品、食料、アグリビジネスなど、多岐にわたる分野で事業[RI7] を展開しています。近年では新規事業の創出[RI8] にも力を入れており、2019年1月にさまざまな事業領域において世界中で投資活動を展開していくことを目的にPegasus Tech Venturesとファンドを設立し、オープンイノベーション活動を進めてきました。Pegasus Tech Ventures はVLP社を双日に紹介し、投資を実行するに至りました。同時に事業シナジーの検証をすすめ次世代ワクチン開発における協業を発表しました。
<具体的な課題と解決策>
近年、新興感染症の世界的な流行が続く中、各国では感染拡大の抑制と治療 法の確立が急務となっています。特に、新たなウイルス変異株の出現や感染力の強化が確認される中、従来のワクチンでは 十分に効果を発揮しないケースも報告されています。このような状況では、変異株にも対応可能な次世代ワクチンの開発がより一層重要視されています。
また、ワクチン開発に成功したとしても、実際に製造・供給するための生産能力が不足している場合、ワクチンの普及が進まず感染抑制効果が限定的となるリスクがあります。パンデミックの完全な収束のためには、迅速かつ大量に供給可能な生産基盤を確立することが求められています。
さらに、ワクチン普及においては、安全性の確保が極めて重要です。ワクチン接種後の副反応や長期的な安全性評価が求められており、社会的な受容性を高めるための取り組みも 不可欠です。これらの課題を解決するためには、技術革新と安定した生産体制[RI15] の両立が必要です。
双日とVLPは、こうした 課題に対処するため、mRNA技術を活用した次世代ワクチンの共同開発を進めています。VLPが持つ、無力化したウイルスと同様の構造を持つVLPを体内に投与し、免疫反応を誘導することで、予め抗体を生成させる 技術をもとに、変異株にも対応可能な柔軟性を持ったワクチン開発を進行中です。
加えて、双日はVLPの技術基盤を支援するとともに 、双日がもつリソースを活かしながら、研究開発を加速させ、早期の治験開始・実用化を後押し しています。
この協業を通じて、両社は、次世代ワクチンの実用化に向けた研究を進め、感染症対策の強化に貢献する基盤を築いています 。現在、臨床試験 の準備も進んでおり、双日の出資により、ワクチンの早期実用化に向けた体制も 整いつつあります。今後、両者は臨床試験を通じてワクチンの有効性を検証し、商業化に向けたデータを収集していく予定です。さらに、将来的にはグローバル展開も視野に入れ、両社の協業は引き続き進められていく予定です。
<参考資料>
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VLP社 公式HP:VLP Therapeutics raises $16M Series A for cancer treatment vaccine R&D
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※1:ウイルスのゲノム情報を含まないウイルスの殻と同形の無害な粒子。無力化したウイルスと同形のVLPを体内に投与することで、免疫反応を起こし、予め抗体を作らせる。